梅もぎの帰りに、この辺でニワウメと呼ばれているユスラウメを見つけた。懐かしいなあ!
今から50年も前の子どもにとって、この季節の楽しみは、ニワウメやグミや桑の実やスグリやアンズが熟して食べられることだった。
ニワウメは友人の庭にあった。この季節に彼女の庭で遊ぶと、手のひら1、2杯のニワウメをもぐことを許されて、はしゃいで食べた記憶がかすかにある。
グミはどこの家で食べたのだろう?暗紅色の勾玉形の地に金粉を刷いたような・・・・・・あのグミは?
スグリは酸っぱかった!スグリという不思議な音の響きと、半透明の緑の小玉にスイカ模様の見た目もエキゾチックで、子ども心にロシアのシベリアの産物のように思っていた。
酸っぱいと言えば、スカンポも酸っぱかった!当地ではイタンドリと呼んでいた。太い充実した茎を折り、シュルシュルと皮をむいて、チョット塩をつけて食べた。カリカリといい音がした。味は強烈に酸っぱくて、匂いも青々とした新鮮な匂いだった。これも好きだった。
当時、日本の医療はまだ貧しかった。だから子どもの命を脅かすような、深刻な伝染病がウジャウジャしていた。夏には日本脳炎と赤痢・疫痢・腸チブスが流行った。だから遊びの中で食べるこうした小果を、母は危険視していて、私は食べることを禁じられていた。しかし友達が食べるのに、私だけが食べないなんて・・・・・・できっこない!それに私はこういうモノが好きだった。
何も言わなければ、母にはバレなかった。しかしカミズ(桑の実)を食べると、唇も舌も歯茎まで紫に染まってたちまちバレて、叱られた。友人たちの青紫に染まった口の中で、歯が異常に白く光って見え、子どもたちは、なんだか急に野蛮人になったみたいな気分になった。
カラウメ(アンズ)は近所に大きな木があった。その家にはおばあさんが1人で住んでいた。学校から帰ると、子ども達はおばあさんに断わりもなく、裏庭の木の下に落ちている熟したカラウメを拾って食べた。ちょっと押すと二つに割れて、大きなタネがポロンと落ちた。タネの抜けた実を、皮ごと食べた。甘くて、いい匂いがして、おいしかった!
それにしてもあの時、おばあさんに、拾わせてほしいと挨拶をした記憶がない。当たり前のように拾って食べていたが、許可を貰っていたのだろうか?それとも盗んでいたのだろうか?あるいはまだおおらかな時代で、子どものそういう行為は、容認されていたのだろうか?
今の世の中、こうした食べ物は子どもたちに人気がないとか。だからもう作らない。でも私は好きなんだなぁ!
そこで5,6年前、日本種の3倍も大きい実をつけるという、トルコ産の桑の木の苗を植えた。すでに4メートルほどにも育っているのに、いまだ実をつけない。とても楽しみにしているのだけれど・・・・・