カスピ海ヨーグルトの豆腐は非常においしいが、ご飯のオカズには向かなかった。というより、発芽五穀ご飯とは相性が悪かった。普通の銀シャリご飯なら、ご飯も豆腐もお互い引き立てあって、いい献立となっただろうに。
ヨーグルト豆腐と発芽ご飯を一緒に食べたら、ご飯の強烈な個性で、豆腐の繊細なおいしさが分からなくなり、豆腐に足を引っ張られて、発芽ご飯のダイナミックなおいしさが半減してしまった。だから豆腐は豆腐だけで単品として楽しみ、発芽五穀ご飯は、いつも通りのオカズで食べた。
主食の要件というのは、多分、どんな料理とも合うこと、つまり強烈な自己主張がないことだろう。イメージとしては白いキャンバス。その上にオカズという絵の具を乗せて、食事という絵を描く。
その点発芽五穀ご飯はまことに個性的で、主食としてのこの要件を欠いている。特定の食品とは非常によく合うものの、合わないものもまた非常に多い。
基本的に油脂類と相性がいい。もっとも手軽でおいしい組み合わせはナッツ類だ。ゴマ、クルミ、ピーナツ、カシューナッツ、アーモンド、ピスタチオ・・・。
ビンボー暮らしの我家では、自己調達できるクルミがほとんどだが。クルミを年間30キロも消費する理由が、ここにある。
クルミは煎って・砕いて、僅かな調味料とともにふりかけるだけ。これだけで1枚の絵として完成してしまい、本当においしいくて、オカズなしで、ご飯1杯食べてしまう。この場合のオカズは、調和を乱す邪魔者である。
したがってオリーブ油、酢・油ソース、マヨネーズ、バター、クリーム・・・・・・もいい。この延長線上に、揚げたおセンベイとの組み合わせがある。呆れられるかもしれないが、ビールのツマミの「柿のタネ」、ポテトチップスをふりかけても非常においしい!買ってまではやらないが。
野菜料理なら天ぷら、特にニンジンや牛蒡のかき揚げや、ナスやカボチャを一旦素揚げしてから煮込んだ料理などと、とても合う。肉類ならカリカリのベーコン。
ダメなもの。お刺身、数の子・タラコ・イクラ、ウニ、ウナギ、塩辛、アボガド・・・寿司ネタ系はたいてい合わない。しかし魚介類でも干物にしたイワシや鯖の焼いたんは、とてもよく合う。
思いついたことがある。発芽五穀ご飯は、食味・食感がお赤飯によく似ている。お赤飯と刺身は合わない。数の子や塩辛なんて、考えただけでゾットする。そうか!お赤飯が主食にならない理由はここにある?
豆腐をスダチとお醤油で食べるのではなく、カラリと揚げ豆腐にすれば、きっと五穀ご飯と合うだろう。でもモノグサ派の私はやらない。前菜としてヨーグルト豆腐の繊細な味を堪能してから、メインのご飯に進めばいいのだから。